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- 2016/11/19
- 20:23
夕風は、
コスモスを焼き付けるまなざし――。
空想に膝を曲げた、
大きな国道で、
なんだか今日は、
マルセル・デュシャンみたいだったけど・・
僕は少し、
花の名前を知りすぎている、
気がします・・。
百面相の稽古みたいになる僕を、
ひっそり灼いてしまうのは、
炎ではなくて、
秋のさみしい道。
過去もなければ、未来もなく、
ワードプロセッサーで、
ナイーブとイノセントに磨きをかけていた、
十二、三歳の頃を思い出します。
たまらないほどの虚脱感は、
砂漠のような沈黙の渇きを生みだし、
強い力で言葉の中の性的なものを、
見つけます。
ラジオボーイで、
ただひたすら、
洋楽の虜・・。
そのくせ、CDでは、
邦楽ばかり聴いていて――。
僕等はまじわってるんだろうか、
だとしたら、六ペンスの贋金だね、
あるいは、九か月かけて、残りの三か月で、
死の準備をはじめるようなものだね、
インチキも嘘も出鱈目も、
どうしようもないぬかるみのようにある、
僕の百パーセント。
そこは、真理の浜辺で、
僕は完璧に偶像的な童貞だった。
女たちは僕を見るたび、羞恥による破廉恥を働こうとした。
僕は貞操帯をはいた。
しかし彼女たちは山姥のようにそれを掻き毟ろうとした。
嘘だけど。
でもそんな嘘が、いつのまにか、
僕のある種の日常的な場面では驚くほど本当になっていて、
僕はどうも、人にちょっと神秘的に見えるらしい。
でも、いまさら二枚目にはなれないよ、
いまさら、頭脳明晰のふりもできないよ。
恥ずかしいことをいっぱいして、
それも、いろんな失敗を伴って、
それでも、酔いどれ船のように来た、
ふしぎな花の名前を摘み取った、
日本が小さく見えた、
世界がとてつもなく大きく見えた、
僕は変りたかった。
たくさんの人が教えてくれた、
そして僕は僕で体当たりで、いろんなことを学んだ。
芸術家はサインするものだ、と。
生きることは死ぬほどしんどいことだ、と。
生きてゆくのが嫌になっても終われなくて、
作り損ねた落とし穴みたいだ、
そのくせ、そこから遠い潮騒の音がして、
人知れず重なり合ってきた、
海の声がした・・。
好き勝手に入り混じって生えて、
霜が下りて、枯れて、腐って、でもまた芽吹いて、
とくべつな生命たちが織りなす、
とりとめもなくまだらな色合いの秋の林にいて。
僕はたくさんの才能を発見した。
そしていつか、
僕がそう思ったように、
世界中の誰かが僕の才能を発見するだろう。
僕は古代の氷河、
あるいはデスマスク。
君は、本当の世界の真実に、
いま一歩触れた気持ちがするだろう。
でも、僕が望んだのは、
こんこんとわき出てくる泉じゃない、
この海のようなやさしい感情――。
コスモスは、
秩序をもつ完結した世界のことなんだよ。
そうだろうか?
そうだよ、と言われて、
光になって、
次の瞬間には、水になって、
風になっていた。
夕風は、
コスモスを焼き付けるまなざし――。
時間が追いついたよ、
流れが一つのものに組み込まれようとしているよ、
なんだか今日は、
マルセル・デュシャンみたいだったけど・・
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