4
- 2016/08/03
- 00:53
土で作られたトマトを食べてみたい。
皿に運ばれてきた時の匂いが実にいいトマトを食べてみたい。
・・トマトを鷲掴みにする映像、映像的な革製品の手。
シェフは俎板に置いてあったトマトを几帳面なまでの正確さで切り分ける。
子供がトマトの匂いを嗅ぎ、頬ずりするように、そこには一定のリズムが感じられる。
実にゆっくりと、何かの剥き身や贓物のように、この鮮明な色を、
オレンジや黄色がまぶしい南国にする。
ひたすら雲散も揮発も沈殿もしない、夏の郷愁・・を――。
そして暑気にむせ返るような夏の日に熟れて腐ることなく、
甘ったるい、生き生きした、芳香をさせて、夕食を準備している夕方ごろのことを、
僕に思い出させるのだ。食品の匂い、人間の体臭、部屋の匂い、扇風機の音・・。
そして僕はビールを片手に、息を殺してひそんでいる、
夏をゆめうつつのうちに味わう――。
からん、と溶け出した氷の気配、風鈴の音・・。
スポンサーサイト